パラミロンEOD-1開発ストーリー

水の研究が、
パラミロンEOD-1という
新たな結晶へとつながる

1957年の水処理事業の開始以来、神鋼環境ソリューションは、水に関わる幅広いビジネスを展開してきました。
さらに、水処理技術と並行して、食品・医薬品製造に関する技術も開発・発展。長い歴史の中で、多くの開発者達が情熱をかけて追及してきた技術は、やがてパラミロンEOD-1という新たな結晶へとつながっていきました。

01

安心して飲める水を
普及させる
1960年代~80年代

蛇口からきれいな水を

現在のように、まだ水道水が整備されていなかった1963年。国は上水整備などを含む「公共投資緊急5カ年計画」を開始します。これにより、日本各地で上水道の整備が一気に進みはじめることとなり、当社も重力を利用した「急速ろ過設備」を中心とした上水プラントを全国の自治体へ納入することで、日本の上水道整備に大きく貢献しました。

水のない所に水を届ける

全国の上水道整備が進んだといっても、離島の整備はまだまだ不十分。水不足や塩辛い水(かん水)に悩まされている人々が多くいました。そこで当社は、1971年に日本初の電気透析法による「大型かん水脱塩設備」を東京の伊豆大島に納入。島民の水への悩みを解消しただけでなく、水不足解消による観光振興にも貢献しました。
1979年以降には、車載式の浄水セットを自衛隊に納入し、PKO活動や被災地支援の現場など、世界各地への水の供給にも大いに役立つ結果となりました。

伊豆大島町に納入したイオン交換膜による、かん水脱塩浄水場

02

微生物を活用して、
美味しい水をつくる
1990年代~

自然界の水浄化作用に着目

水道水の高度浄化は、薬品処理に加えてオゾンや活性炭などの「物理化学」による処理が主流です。しかし、自然界では「微生物」が水を浄化しています。ここに着目した当社は、「より安全でおいしい水をつくりたい」という思いから、自然の浄化作用をお手本に、微生物を使った浄水処理技術を日本で初めて開発。安心して飲めるおいしい水をつくり出せるようになっただけでなく、薬品や電力の使用を抑えた地球にやさしい水処理システムも実現しました。

この研究を積み重ねていった結果、1993年には日本初となる微生物を利用した「自然ろ過設備」を納入。以降、微生物を利用した水処理プラントは日本だけでなくベトナムへも納入され、世界のおいしい水づくりにも役立っています。

水中の微生物が、汚れを吸着・分解

微生物を利用したろ過設備(北九州市)

03

そして、“パラミロンEOD-1”
の発見へ
2000年代~

微生物研究の蓄積と情熱が
生んだ出会い

微生物の新たな可能性を求め、様々な研究を行っていく中で、水処理と微細藻類の関係性に着目します。微細藻類に知見のある大学とも共同研究を開始し、様々な壁にぶつかりながら試行錯誤を繰り返し、研究に邁進していきました。

独自のユーグレナ
EOD‐1株の発見

2012年、ついに大学との共同研究で他を圧倒する驚きの増殖力を持つユーグレナを見出します。『このユーグレナなら、世の中の役に立つかもれしない』。その大きな可能性に胸が震えました。これが、ユーグレナEOD-1株発見の瞬間です。

ユーグレナ(EOD-1株)の顕微鏡写真

04

酵母を育てる技術が
ユーグレナを育てる技術に
現在~

醸造用タンクで培った技術

当社は戦後の鉄製品不足に対応するため、1946年に神戸製鋼所の琺瑯(ホーロー)部として創業しました。この琺瑯製造事業は、酒造メーカー向けの醸造タンク製造へとつながり、やがては約90%ものシェアを誇るトップメーカーへの躍進につながっていきます。

当社が開発した醸造用タンク

タンク製造技術もさることながら、この過程で培われたのが、攪拌技術でした。酵母の状態が、お酒の味の良し悪しを左右するため、壊れやすい酵母を大切に育てる技術は、何よりも醸造タンクに求められる要素だったのです。
その確かな技術力の証として、当社の醸造用タンクは、日本酒からビール、洋酒へと拡がりを見せ、さらには医薬品製造機器にまで領域を拡げていきました。

繊細なユーグレナを育てるために

酵母と同じように、ユーグレナも、とても繊細な生き物です。2014年から、ユーグレナの本格的な培養が始まりましたが、この舞台裏には、醸造タンクで培った攪拌技術が大いに活かされています。やさしく攪拌し、やさしく育てる。高品質なユーグレナは、こうした確かな技術に支えられているのです。

開発者インタビュー

ユーグレナEOD-1は、
簡単には育ってくれない。
だからこそ、やりがいがある。

藻類事業推進室 生産責任者 川嶋 淳

微生物のポテンシャルを
最大限に引き出す

当社は社名の通り、「環境」に関わるビジネスを展開しています。その領域は様々ですが、私たちの研究範囲は、下水を浄化したり、安全でおいしい飲み水をつくるなど、微生物を活用したものです。そのため、どんな微生物が、どんな環境下で、どのように増殖・活動していくのかを、ひたすら研究してきました。

「めまぐるしく変わる水質条件に適合する微生物はどれか」「高温でも生き延びられる微生物はどれか」。より良い微生物を見つけ出すために、自然界から多種多様な微生物を採取してきて、徹底的に調べ上げることも少なくありません。そうやって、微生物が持っているポテンシャルを最大限に引き出していくのです。

微生物のさらなる可能性を
求め、EOD‐1株

水処理と微細藻類を組み合わせて何かできないか?私たちはそんな思いから微細藻類の研究をスタートしました。微細藻類には、バイオ燃料から健康食品に至るまで様々な可能性があります。微細藻類の知見に定評のある大学と共同研究を開始することで、より多くの藻類の選別が進みました。

ある日、大学との共同研究で他を圧倒する増殖力をもつユーグレナを見出します。通常、様々な微生物が混在する環境下では、エサの取り合いによる生存競争が起こり、多くの微生物は死んでしまいます。しかし、そんな環境下でもこのユーグレナの増殖力は圧倒的でした。増殖力の高さは生産性の高さにつながります。
『このユーグレナなら、世の中の役に立つかもしれない。』
その増殖力に驚くと同時に、大きな可能性を感じました。これが、ユーグレナEOD-1株発見の瞬間です。

ユーグレナEOD‐1株に
隠されていた、2度目の驚き

EOD-1株発見後、さらに新たなことがわかってきました。
ユーグレナは特有の貯蔵物質である「パラミロン」を細胞内に蓄積します。パラミロンは食物繊維に分類される物質で、機能性に関する様々な研究が進められています。
一般的なユーグレナであるZ株に含まれるパラミロン量が約15%(光合成培養の場合)なのに対し、EOD-1株には70%以上も含まれていることがわかりました。通常、70%以上もの単一成分を含有する微生物はなかなか存在しません。
この結果には、EOD-1株を発見した時以上に驚きました。

増殖力が高く、パラミロンを大量に蓄積する特長を有するEOD-1株を実用化するための次の課題は、商業規模の生産を実現するための、大量培養技術の確立でした。

理想の培養条件を求めて、
スケールアップという難題に
取り組む

ひと口に培養と言っても、攪拌スピードや酸素の量、培養液の成分など、複合的な条件が重なり合っています。さらに、培養するタンクの形や大きさによっても、培養条件は細かく変化してきます。巨大なタンクを作って、そこで実験できれば良いのですが、実験の度に大量の培養液を廃棄するわけにもいきません。そこで、大きなタンクにおける理想の培養条件を小さなタンクの中に再現し、何度も何度も条件の最適化を図りながら、少しずつスケールアップしていくのです。なかなか思い通りにはいきませんが、だからこそやりがいを感じて取り組んできました。

ユーグレナを育てる上で、まず追求しなければならないのが、培養液の成分でした。繊細なユーグレナが、伸び伸びイキイキと育つ成分は何か。100種類以上の組み合わせを、ひとつひとつ丁寧に検証していき、最適だと思える成分の組み合わせを導き出しました。その成分をエサにして、無菌状態の密閉タンクで培養するのが、当社独自の純粋培養です。

ユーグレナの生産効率は、
培養液と攪拌技術で決まる

ユーグレナは、育つ過程で大量の酸素を消費するため、培養液中には十分な量の酸素が溶け込んでいる必要があります。そのため、タンク内に送り込んだ空気を均一に攪拌する必要があるのですが、これが一朝一夕でできるものではないんです。なぜなら、ユーグレナは非常に繊細な生き物だからです。強く攪拌するとユーグレナは壊れてしまいます。しかし、攪拌が弱いと酸素不足で十分に育ちません。
そのジレンマを解決へと導いたのが、当社で醸造用タンクなどを長年製造してきた攪拌のプロ達でした。社内の技術を結集することで、理想的な攪拌技術を得ることができ、スケールアップした場合の最適な攪拌条件まで、計算で正確に算出できるようになりました。
こうして改良してきた培養液と攪拌技術、そしてEOD-1株の優れた特性により、安定した大量培養が可能になりました。

高品質なユーグレナEOD‐1株を、
お客様のもとへ

当社は、密閉タンクで培養するため、不純物などの混入を防ぐことができ、天候の影響も受けないので、栄養素のバラツキが少ない高品質なユーグレナを安定的に生産できます。
大量培養の成功によって、高品質な"ユーグレナEOD-1株"をお客様にお届けすることが可能になりました。
これからは、お客さまが手に取りやすい健康食品等、様々なユーグレナ商品の研究開発に取り組んでいきたいと思います。私たちの挑戦はまだ始まったばかりです。